第95章

彼女はほとんど逃げるように食卓を離れ、スリッパのまま足早に二階へ上がっていった。背中越しに、青山彩の心配そうな声が飛んでくる。

黒田理沙は視線を引き戻し、椀を持ち上げてスープをゆっくり一口すすった。

悪くない味だ。

青山彩と青山博文は顔を見合わせる。

同じ疑問が、その一瞥に乗っていた。――理沙のあの言葉はどういう意味だ? 「自分で自分の首を絞めた」って、いったい何のことだ。

青山彩は口を開きかけたが、娘のあまりにも平然とした顔を見て、言葉を飲み込んだ。

青山博文も茶を口に含み、階段口から視線を戻して、それ以上は何も言わない。

子ども同士の揉め事は、親が手を突っ込むより、本人たち...

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