第11章 そろそろ結婚するべき

リゾートのプロジェクトは中林真由が最も精通しており、契約書も非常に念入りに作成されていた。

こういった多国籍企業との共同プロジェクトでは、彼女はいつも二つの言語で契約書を用意するのだが、今日はさらにフランス語版も一枚追加されていた。

彼女は阿部静香が読めるかどうかは聞かなかった。阿部静香が読めなくても、今野敦史が読めるからだ。

ところが、今野敦史たちが出て行って一時間ほど経った頃、中林真由の携帯が鳴った。

「クラウドレストランの最上階だ。すぐに来い。契約書を再印刷しろ」

今野敦史の氷のような声が響く。

「はい、かしこまりました」

中林真由は電話を切ると、すぐさま朝のうちにバック...

ログインして続きを読む