第12章 外人

「中林真由!」

今野敦史は彼女の顎を強く掴み、無理やり顔を上げさせた。

「言ったはずだ。あいつは他の女とは違うとな!」

その瞬間、中林真由の胸には言いたいことが堰を切ったように溢れ出た。

本当に恋に落ちたのか、自分との関係を断ち切るつもりなのか、阿部静香と結婚する気なのかと、問いただしたかった。

だが、彼の冷え切った瞳と向き合うと、全ての言葉が喉の奥に詰まって出てこない。

彼は自分に逆らう者を好まない。道具である自分は、ただ受け入れればいい。反論は必要ないのだ。

「かしこまりました、旦那様。阿部静香さんをしっかりご指導いたします」

仕事も、そして生活も、彼女が教えることになる...

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