第14章 転げ落ちる

中林真由の体は止まらない微かな震えに襲われ、『捌け口の道具』という言葉が脳内で何度もこだましていた。

自分の立場は分かっている。自分がただの道具に過ぎないことも。

しかし、その言葉が今野敦史の口から発せられると、また別の感覚を覚える。

今野敦史からの軽蔑には慣れていたはずなのに、それでも胸が痛んだ。

彼女は奥歯を固く噛み締め、泣き出しそうな衝動を必死に堪えると、すぐに笑みを浮かべた。

「阿部静香はラブドールには嫉妬しないでしょうけど、私には嫉妬しますものね?」

彼の顔が曇れば曇るほど、彼女の笑みは一層輝きを増した。

好きな人がいるくせに、自分の下半身は抑えられない。小林洋子の言...

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