第15章 柔らかい柿ではない

話の最中、中林真由はまたフラッシュの光を感じた。

今度こそ、あの男が自分を撮っているのだと確信した。

男は写真を撮るだけでなく、時折動画も撮影しており、そのすべてが中林真由の目に映っていた。

もし現場にクライアントがいなければ、中林真由は彼の元へ駆け寄り、いったい何がしたいのかと問い詰めていただろう。

今は皆が見ている。見苦しい騒ぎは起こしたくなかった。

阿部静香は手袋を受け取ると、嬉しそうに駆け寄った。「今野社長、手袋をお付けします」

「ん」

今野敦史は彼女に優しく視線を向け、手を差し出した。阿部静香は顔を赤らめながら、彼に手袋をはめてやる。

今野敦史が阿部静香の耳元で何を...

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