第17章 証拠

阿部静香は俯いた。今ここで引き下がれば、今野敦史に疑われることはわかっていた。

彼女は考えを巡らせ、ふと、その目が輝いた。

先代の工場長はさっき、監視カメラはないと言っていた。ならば、中林真由はどうやって自分がボタンを押していないと証明するのか?中林真由は、ただ自分をカマにかけているだけだ!

阿部静香の口角が上がる。

中林真由がボタンを押したかどうか、それを知っているのは二人だけ。監視カメラもないのに、誰が中林真由の証人になれるというのか?

今、あれほど厳しい剣幕なのは、ただ自分を動揺させたいだけ。残念ながら、この阿部静香はそう簡単には脅されない。

ようやく目の上のたんこぶである...

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