第202章 商売替え

ビジネスの世界に長く身を置きすぎたせいか、あるいは単なる直感か。中林真由は、目の前のグラスに注がれた酒を「飲むべきではない」と本能的に察知した。

 喉は渇いていたが、彼女は少し考えた末、急須から茶を注いで口を潤すにとどめた。

 高橋大和がいる場所では、警戒を解くわけにはいかない。出された料理に手をつける気にもなれず、食欲はすっかり失せていた。

 そんな彼女の様子を見て、高橋大和は少し残念そうな表情を浮かべた。せっかく「いいもの」を仕込んでおいたというのに。

 先ほど、彼は確かに見たのだ。白川有香が今野敦史の手を艶めかしく撫で、今野もそれを拒まなかった光景を。

 やはり中林真由は嘘を...

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