第256章 取引成立

中林真由が病院から飛び出すと、今野敦史の車はまだ同じ場所に停まっていた。まるで彼女を待っているかのように。

後部座席のウインドウが下がり、電話をかけている今野敦史の姿が露わになる。

上村賢人は中林真由の姿を認めると、慌てて傘を手に車を降り、彼女に差し掛けようとした。

だが彼女はその手を払いのけ、一直線に車の前へと駆け寄る。

今野敦史は電話の向こうに「ああ」と短く告げる。それからようやく、視線を車外へと向けた。

中林真由の姿は酷く惨めだった。先ほどまでの小雨は、いつの間にか土砂降りに変わっている。

全身ずぶ濡れになりながらも、彼女はそんなことを気にする素振りさえ見せず、ただ今野敦史...

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