第257章 飛べない

中林真由はかつて、ことあるごとにセンチュリー・ガーデンに滞在していた。それゆえ、ここには彼女の衣服が一通り揃っている。

だが、ここを訪れる者は長らくいなかったようだ。清掃こそ入っているものの、室内には澱んだ空気が漂い、どこか死に絶えたような静けさに包まれていた。

中林真由に入浴している時間はない。濡れた体をタオルで拭うと、すぐさま着替えを済ませた。

その間、今野敦史と言葉を交わすことはなかった。彼はただ静かに、彼女の姿を目で追っていた。

表情こそ平静を装っていたが、中林真由の所作には微かな焦りが滲んでいる。

着替えの最中、二度もボタンを掛け違え、結局はファスナー式の衣服を選んで身に...

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