第292章 異変

中林真由は小島文彦を避けるため、逃げるように化粧室の方へと足を向けた。

宴会場の出入り口まで来たところで、無意識に振り返る。小島はすでに、近くにいた美女と談笑していた。

彼女は呆れたように首を振った。これだからプレイボーイは。あの深情けな演技に何の意味があるというのか。

今後こそ、小島文彦とは距離を置こう。そう心に固く誓う。

きびすを返したその瞬間、一人のウェイターが酒の載ったトレイを持ったまま、彼女に向かって突っ込んできた。

振り返っていたおかげでわずかに距離があり、彼女は辛うじてその衝突をかわすことができた。

トレイにはなみなみと注がれた赤ワインが数杯。もしぶつかっていたら、...

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