第305章 白川芽唯の目的

今野敦史は部屋には入らず、入り口に立ったまま、淡々とした口調で言った。

「毒を盛った人間は、あんたに恨みがある奴だ。あらかじめ毒を用意し、人混みに紛れて犯行に及んだ。誰がやったか特定されないように計算ずくでな」

中林真由はわずかに伏し目がちになる。やはり、考えは同じだったか。

彼女は自嘲気味に笑みを浮かべた。今野敦史の聡明さをもってすれば、これくらいの推論は造作もないことだ。

彼女の手腕はすべて彼が叩き込んだものだ。彼が少し頭を働かせれば、事の真相などすぐに看破できる。

ただ彼は、彼女のために思考を巡らせることも、彼女を庇う言葉を口にすることも拒んでいるだけなのだ。

白川芽唯が口...

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