第306章 あなたの意思を尊重する

白川芽唯の声色には深い憂慮が滲んでおり、中林真由を心底から案じているかのように見えた。

今野敦史の視線は、終始中林真由に注がれていた。今日の彼女は、どこか様子がおかしい。

拳を握りしめ、時折こめかみを押さえる小さな仕草──そのすべてを、彼は見逃してはいなかった。また偏頭痛の発作だろうか。

真犯人を突き止めたことで緊張の糸が切れたのか、中林真由の顔色は幾分良くなっていた。今はもう、これといった異変は見受けられない。

それでも、彼は口を開いた。「誰かに送らせる」

「結構です。タクシーを拾いますから」

白川芽唯の茶番になど付き合っていられないとばかりに、中林真由は足早に階段を降りていっ...

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