第307章 君をいじめるわけではない

今野敦史の言葉に、中林真由は思わず吹き出しそうになった。

今さら尊重? こんなことで?

私が口を開かなければ助けない、それも尊重。

私が懇願しなければ証言もしない、それもまた尊重だと言うのか。

真由は拳を固く握りしめた。胸の奥で感情が渦巻き、今にも涙が決壊しそうだ。

「で、乗るのか?」

今野敦史はロックを解除し、静かに彼女を見据えた。

真由は深く息を吸い込み、ドアを開けた。

いつ倒れてもおかしくない体調だ。ここで意地を張って山道を歩いて降りるなど、理性的ではない。

ただ、後部座席に乗り込んだ彼女の視線は、窓の外に向けられたままだった。

「料金はお支払いします」

バックミ...

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