第351章 バレンタインデー

中林真由は鼻をすすり、返す言葉が見つからなかった。

今野敦史も、まさか彼女が飛び込んでくるとは思わなかったのだろう。愛おしさと滑稽さが入り混じった眼差しを彼女に向けた。

「どうしたんだ?」

彼は壊れ物を扱うように慎重に彼女の体を支え、外へと歩き出した。

中林真由は多くを語りたくなかったが、ただ一つだけ問いかけた。

「母さんのところへ帰って様子を見たいんです。送っていただけませんか」

今野敦史は眉を寄せた。

「分かっているはずだ。今の君は外出を制限されている」

出社こそ許されているものの、エリア外への移動は禁じられている。

重大事件に関与している以上、世論への影響も計り知れな...

ログインして続きを読む