第360章 もう敦史とは呼ばないのか?

今野敦史はわずかに眉根を寄せた。まるで心臓を巨大な手で鷲掴みにされ、ぎりぎりと締め上げられているような感覚だ。

彼は幾度か深く息を吸い込むと、中林真由をじっと見据え、執拗に答えを求めた。

「なぜ『敦史』と呼ばない? 以前はずっと、そう呼んでいたはずだ」

中林真由は何気ない様子で菓子を一つ摘み、口に放り込む。

「ここのお菓子、ずいぶん変わってますね。外では見かけないタイプです」

明らかな対話の拒絶だった。先ほどの話題には触れたくないのだ。

だが、今野敦史はなおも食い下がる。

「なぜ、敦史と呼ばなくなった」

中林真由は菓子を食べ続け、視線をステージに向けたまま、彼を見ようともしな...

ログインして続きを読む