第82章 必ず行く

その日、秘書課は奇妙なほど穏やかだった。

江口花が中林真由にまとわりついて質問攻めにすることもなく、竹田南もまた、悠然と仕事をこなしている。

おかげで真由は、ようやく引き継ぎ業務に着手できた。

会社を去るまであと数日。この期に及んで不手際を起こすわけにはいかない。

書類を整理する真由の手元を覗き込み、山崎奈々未が声を潜めた。

「今野社長、あんたが辞めること認めたの?」

奈々未は以前からある法則に気づいていた。真由がハイネックの服を着ている日は、十中八九、前夜に社長から激しい扱いを受けた証拠なのだ。

十年の付き合いになる奈々未は、あの二人のことをよく理解している。

真由が足の怪...

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