第9章

レイア視点

 結局、ただの取り越し苦労に終わった。

 哨戒班が夜通し捜索したが、見つかったのはいくつかの中途半端な足跡と、へし折られた木の枝だけ。痕跡は途中で途切れていた。

「ただの流れ者が通り過ぎただけのようです」

 ひとりの戦士が報告する。

「敵意は感じられませんでした」

 ゼインが眉をひそめ、私を見る。

「警備を増やす。ひとりで出歩くな」

 私は反論しなかった。

 前世で、陰謀の類いは腐るほど見てきた。こういう不気味な静けさこそ、嵐の前の兆候になり得る。

 群れの領地へ戻りながら、私は口を開いた。

「シエナの消息は?」

 あの崖の事件以来、シエナは黒月から姿を消...

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