カム9-エグゼスと期待

怒りを込めて拒絶するつもりだった。少なくとも、もっと大声で、毅然とした態度で。なのに、口をついて出たのはまるで懇願のような弱々しい声だった。心臓が早鐘を打っている。もし彼が止まらなかったら? インキュバスというのは、自制心があることで知られている種族ではないし、他人の境界線を尊重することにかけても評判は良くない。

ハリソンは凍りついたように立ち止まり、眉を寄せて私を見つめた。何が起きたのか理解できていないようだ。拒絶されることに慣れていないのだろう。そんな経験、彼には滅多にないはずだ。少なくとも、今私に対してしているように、魔法の魅力を全開にして相手に浴びせかけている時は。

私を掴む力が緩...

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