第3章

 骨の髄にまで染み入る痛みが、意識を闇の底からずるずると引きずり上げた。

 重たいまぶたを無理やりこじ開け、手首に刻まれた転移の紋章へ目をやる。

 カウントダウンは、ゼロだった。

 今日が、その日だった。

 次の瞬間、下腹部の奥が空洞のように裂かれる感覚が走った。息を呑み、指がシーツに食い込む。

「エララ!」

 ライラがベッド脇に崩れ落ち、激しく震えていた。「死んだかと思った……」

「大丈夫……」私は掠れ声で答えた。

「違う……」ライラは嗚咽混じりに言葉を絞り出す。「エララ……赤ちゃん、だめだったの……」

 無感情の呪いは、イグニスへの恋情を一滴残らず消し去っていた。けれど、この生々しい、生理的な喪失までは遮ることができない。

 胸を残酷な痙攣が襲った。まるで誰かの手が心臓を握り潰したみたいに。私は小さく丸まり、止めどなく涙が頬を伝った。胸が激しく上下し、空気を貪るように喘ぐばかりで、言葉が一つも形にならない。

 私は彼の子を宿していた。なのに、もういない。

 絶望に息を整える暇すらなく、重い樫の扉が耳をつんざく轟音とともに粉々に弾け飛んだ。

 イグニスが大股で踏み込み、金色の爬虫類じみた瞳に容赦のない怒りを燃やしていた。

「反吐が出る」彼は唸り、ベッドの上の私に覆いかぶさるように見下ろす。「なぜセラフィナに毒を盛った!?」

 痺れるような感覚が全身を洗い、やがて無感覚へと変わっていく。呪いの冷たい理屈が混乱を上書きする。「……何の話?」

「とぼけるな! 狩猟場で影の呪詛を使っただろう。俺たちの卵を殺し、今セラフィナは死にかけている」

「私は誰も毒を盛っていない。彼女の卵は偽物だった」私は平坦に言った。

「嘘だ! 王宮の癒やし手が確認した。あいつの魔力核は星火で腐り落ちている。治すには純粋な星の魔法の心血だけだ。――お前の血だ」

 その瞬間、理解した。彼は、私の命を抜いてでも、私の子を殺した女を救うつもりなのだ。

「嫌よ」私は氷のように言い放った。

「頼んでいるわけじゃない」

 黒い炎が彼の掌で鍛造され、棘だらけの鉄の首輪へと形を成す。イグニスはそれを乱暴に私の首へはめた。金属の棘が肉へ深く噛み込む。

「イグニス、やめて!」ライラが飛びかかる。「正気!? 彼女は今――」

「邪魔するな!」

 イグニスは凄まじい運動力の波を放ち、ライラを石壁へ叩きつけた。続けざまに上位の沈黙のルーンを刻み、叫び声ごと封じる。

「もう一度しゃべったら、舌を切り取る」

 鎖を引かれ、私は硬い石床に叩きつけられた。できたばかりの傷が裂け、さらに大きく開く。

 彼は私を廊下へ引きずり出し、見世物のように連れ回した。純血たちが凍りついた目で見つめる中、彼らの王が運命の番を犬のように引き回し、汚れ一つない大理石に長い血の筋を引いていく。

 イグニスはセラフィナの扉を蹴り破った。彼女はベルベットの長椅子に横たわり、計算づくの儚さを纏っていた。

「イグニス……」彼女はか細く呻き、怯えたふりで身を縮める。「エララを罰しないで。嫉妬で私たちの子を殺したのは分かってる……でも血を無理やり取ったら……あなたを一生恨むわ」

 イグニスは即座に鎖を落とし、彼女を胸に抱き寄せた。それから、氷が張るように目を細め、私を睨み据える。「跪け! 罪を認めろ。そして心血を抽出しろ!」

 床に伏したまま、私は見上げた。私が、死にかけるほど守ろうとした男を。憎しみの一欠片すら、どうしても湧かなかった。

「……分かった」私は言った。

 これを、番の絆の最後の断絶にしよう。

 ためらいもなく、指先に剥き出しの星光を刃へと凝縮し、自分の胸へ真っ直ぐ突き立てた。

 骨が砕けるような激痛の中、私は最も純粋な核の心血の塊を、乱暴に引きずり抜いた。

 修行の成果が一瞬で奈落へ落ちる。顔から血の気が引いた。

 イグニスは、死人のように青白い私の顔と、喉に盛り上がった血まみれの腫れ痕を見た。瞳孔がきゅっと縮む。胸の奥で、得体の知れない恐怖と憐憫が不意に燃え上がり、手がぴくりと震えて、反射的に私へ伸びかけた。

 だがセラフィナが、完璧な間で苦悶の呻きを漏らし、彼の意識を彼女へ引き戻した。

 私はもう彼を見なかった。残った最後の力で立ち上がり、背を向け、そのまま歩き去る。

 翌朝、イグニスはセラフィナの容体を安定させた後、王の寝所へ戻った。

 涙ながらの謝罪が聞けると踏んで私の部屋へ入る。だがそこにあったのは、完全な空白だった。私の痕跡は、何一つ残らず拭い去られていた。

「エララ?」

 喉を締めつけるような恐怖が、彼を襲う。

「エ、エララ様が……これを」怯え切った従者が、どもりながら言った。

 従者は、小さなガラスの小瓶を差し出した。中には、私の心血の最後の一滴が入っている。

 その脇に、小さな紙片が置かれていた。「これで完済。さようなら」

「……そんな……」イグニスは呟き、呼吸が乱れる。「番が……俺を置いていくはずがない……」

 その音は、処刑人の斧のように彼の脳裏に反響した。

 運命の番の絆が、暴力的に、永遠に断ち切られたのだ。

 イグニスは黒く濁った竜の血を吐き散らし、魔力核が砕けた。凄まじい反動に、その場で膝をつく。

 ようやく、痛いほど理解する。私は竜界を去った。彼を捨てた。

 充血した目を剥き、彼は身体を引き裂く反動を無理やりねじ伏せ、ライラの通信信号を強引に乗っ取った。「エララはどこだ!?」怒号が響く。「どこへ行った!?」

 ライラの立体映像が浮かび上がる。目は赤いのに、笑みだけが残酷に嘲っていた。

「もういないわ。エルフ界へ行ったの。結婚するためにね」

「それから、言い忘れてたけど」ライラは毒を吐くように囁く。「昨日、あなたが鎖で首を引いて廊下を引きずって、セラフィナのために血を搾り取ってた時――あなたの運命の番は、流産で血が止まらず死にかけてたのよ」

 イグニスの表情が、完全に崩れ落ちた。凍りついたまま、彼は息もできない深淵へ、真っ逆さまに落ちていく。

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