第10章 叩き割る

「集合」

小林舞香が顔を上げたとき、目元は赤かった。けれど声だけは凪いでいて、何事もなかったみたいに平静だった。

部員たちは一瞬きょとんとして、それから慌てて隊列を組む。

舞香は列の横に立ち、淡々と告げた。

「ウォームアップ。2周、始め」

ランニングが始まる。がらんとした体育館に、靴音だけが反響していく。

舞香はコート脇で壁に手をつき、背筋を伸ばして立っていた。いつもと同じ姿勢で。

――ただ、誰も気づかなかった。

彼女の身体が、ほんのわずかに震えていたことに。

ウォームアップが終わり、技術練習へ。

今日はリフトの動作を強化する日だった。来週には全国大会の演目構成の初稿を提...

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