第19章 陰で手助けする

矢野汐里の顔から、さっと血の気が引いた。涙は頬に張りついたまま、唇だけが小刻みに震えている。けれど、ひと言も返せない。

小林舞香の言っていることが、全部その通りだったからだ。

バーで一夜限りの相手を探す人間は珍しくない。まして、ああいう高級店ならなおさら。自分からそれらしい合図を出さなければ、見知らぬ男たちがひとりの女をしつこく取り囲むことなんて、そうそうない。

あそこに出入りできるのは、金回りのいいVIPばかり。迂闊な真似をして面倒を背負い込みたがる連中ではない。

矢野汐里は、矢野郁真が来ると踏んで、わざと芝居を打ったのだ。

ただ、我を失った矢野郁真を、自分でも止めきれないとは思...

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