第20章 誰のおかげ

小林舞香はバッグからあらかじめ用意していた示談書を取り出し、相手に差し出した。禿頭の男は歯を食いしばりながら、それに署名した。

示談書を受け取った瞬間、小林舞香の手はかすかに震えた。けれど顔には何ひとつ出さない。ただ背を向けたとたん、膝から力が抜け、危うくその場に崩れ落ちそうになる。

小林修平がすっと腕を伸ばし、彼女の腰を抱き寄せた。半ば寄りかかるように支えられて、小林舞香はようやく少しだけ力を取り戻す。

「叔父さん、私なら大丈夫」

「……ああ」

小林修平は手を離さなかった。

建物を出て廊下を抜けたところで、小林舞香は深く息を吸った。そこでやっと、胸のつかえが少しだけほどける。

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