第32章 チャラにする

練習が終わるころ、小林舞香のスマホがぶるっと震えた。銀行からの入金通知。きっちり40万円。

備考欄には、保釈金と治療費、とあった。

舞香はその一行を数秒見つめ、それからスマホをポケットへ戻した。誰が振り込んだ金なのか、考えるまでもない。

着替えを済ませて体育館を出たとき、また矢野郁真からメッセージが届く。

「金は返した。これでチャラか?」

小林舞香は出入り口に立ち止まった。夜風が少し冷たくて、むき出しの腕に鳥肌が立つ。

少しだけ考えてから、一言だけ打つ。

「うん」

送信。

数分して、ようやく郁真から返信が来た。

「俺たちの間にあるのって、もう金だけなのか?」

舞香はその...

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