第34章 条件

「ち、違う!」

矢野郁真はじりじりと後ずさり、ついには壁際まで追い詰められた。

反射的に小林舞香を見る。

「舞香、違うんだ。そうじゃない」

小林修平は小林舞香を自分の背後へ引き寄せ、矢野郁真の視線を遮った。それから矢野行正へ向き直る。

「舞香をチア部から追い出して、お宅の養女に道を空けさせるつもりだったのか。小林家を甘く見ないでもらおう」

声量は高くない。なのに、ひやりと背筋をなぞるような圧があった。

矢野行正は黙り込む。

この小林修平が養父にひどく目をかけられていることは、彼もよく知っていた。手元に株を持っているのも、まず間違いない。

ただ、小林修平本人はその手のことに執...

ログインして続きを読む