第49章 亀裂

小林修平が廊下の突き当たりから駆けてきた。

今日は濃いグレーのシャツを着ていて、襟元のボタンは二つ外れている。鎖骨のあたりを走る傷痕が、ちらりと覗いた。

右腕の動きはいつもより少しだけ鈍い。だが、よほど注意して見なければ分からない程度だ。

顔色はひどく悪く、目の下の隈も濃い。ひどく疲れているように見えた。

小林舞香のそばまで来ると、何も言わず、まず彼女の腕に目を落とした。

傷はまだ手当てされていない。血はもう乾きかけている。その傷口に視線を二秒ほど留めてから、ようやく田村へ向き直った。

「今、なんて言った? こいつを刑務所送りにするって?」

田村はその目に射すくめられ、半歩あと...

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