第50章 故意の報復

矢野郁真の声が、人だかりの向こうから飛んだ。

その場にいた全員が彼を見る。

矢野郁真は拳を強く握りしめ、他人を説得したいのか、それとも自分自身に言い聞かせたいのか、切羽詰まった声で言った。

「汐里はずっと出たがってたんだ。夢に見るくらい、あのステージに立ちたがってた。出る前なんて緊張でガチガチだったし、そんなことするわけないだろ」

ひと呼吸おいて、さらに続ける。

「それに、こんなネイルどこにでもある。なんでそれだけで汐里だって決めつけるんだよ」

誰も答えなかった。

矢野郁真は苛立ったように声を重ねる。

「きっと舞香が誰かに恨まれてたんだ。閉じ込められたのだって、そのせいだろ。...

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