第64章 矢野汐里の挑発

翌日。矢野行正は家を出る前に、秘書室から電話を受けた。

「……何だって? 藤原グループの法務部が人を寄こした?」

手にしていたサンドイッチを置き、すぐ立ち上がる。

「用件は? ……分かった。今から行く」

途中でふと振り返り、言い置く。

「汐里。今日は俺が欠席届を出しておく。三日、家で休め」

矢野汐里は反射的に立ち上がったが、父の有無を言わせぬ視線に押され、また椅子へ戻る。

「……はい、お父さん」

さらに行正は矢野郁真へ目を向けた。

「言ったこと、忘れるな。三日だ」

そう言い残して二階へ上がり、五分後には着替えを済ませ、足早に会社へ向かった。

会議室に通された藤原グループ...

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