第73章 縁組相手を替える

矢野郁真が翌朝いちばんで病院に駆けつけたとき、病室はすでに空だった。

ベッドは整えられ、棚も引き出しもからっぽ。矢野汐里の私物は、きれいさっぱり消えている。

慌ててナースステーションへ走り込む。

「俺の妹は?」

「矢野汐里さん?」当直の看護師が記録をめくり、「朝6時に自己退院されています。ほら、こちら。ご本人のサインです」

差し出された用紙を受け取った瞬間、郁真の背筋が冷えた。

内容は、矢野汐里が自らの意思で退院し、以後の一切の責任は病院にない――そういう趣旨のものだった。

用紙を返し、すぐに汐里へ電話をかける。

電源が切られている。

もう一度。

やはり、つながらない。

...

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