第77章 一線を越える

小林修平はソファの脇にしゃがみ込み、今にもずり落ちそうな小林舞香を半ば抱きとめた。全身の筋肉が張り詰め、息すら止まる。

舞香の唇はまだ彼の耳に触れている。吐息にはチェリー風味のブランデーが混じり、波みたいに何度も押し寄せて、喉の奥をきゅっと締めつけた。

彼女の腕が首に回る。修平は反射的に、その身体を抱き上げた。

舞香の脚が腰に絡みつき、膝が下腹に当たる。無意識にすり、と擦れた瞬間、修平の呼吸が一拍、途切れた。

「この……バカ!」

掠れた声。悔しさと、少しの甘えが滲む。

「なんで……そんなことするの……バカ……」

修平は指をきつく握り込み、そのまま抱えて舞香の寝室の前まで戻った。...

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