第105章

廊下の灯りが一つだけ、ぼんやりと床を照らしていた。

谷口凛華は桐生颯馬の部屋の前まで来て、ドアノブに手をかけた。押し開けようとした、そのとき――中から幼い声が漏れてくる。

「日奈さん、会いたいよ……いつ来てくれるの? この何日かずっと家にいなきゃいけなくて、全然会えないの、つらい……」

「それにね、医学の資料いっぱい調べたんだ。今の技術なら、絶対に顔に傷なんて残らないって。安心して。ぼく、すごくいい先生、たくさん探してあげるから……」

たった一枚の扉を挟んだ向こう。

桐生颯馬の声が、隙間風みたいに耳へ入り込んでくる。

一言一言が、谷口日奈への気遣いで埋め尽くされていた。

二...

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