第107章

「その話なら知ってるよ。数年前、中島教授がわざわざ俺を飲みに誘ってさ。腹に据えかねるって。せっかくの逸材が、男なんかに縛られちまって……って」

周囲の言葉を聞いた瞬間、谷口凛華は思わず目頭が熱くなった。

正直、今でも中島教授には申し訳なさが残っている。大学を卒業した当時は、もっと学びを続けるつもりだった。けれど計画なんて、人生の都合でいくらでもひっくり返る。どうしようもなくて、桐生朔弥に嫁ぐしかなかった。

――ただ、今はもう軌道に乗っている。

ひとしきり感慨が落ち着いたところで、谷口凛華は小さく咳払いをした。

「みなさん、信じてください。私は絶対に足を引っ張りません」

「よし、信...

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