第110章

「みんな見てよ! さっきの人、あれが私の娘なの! 情けも義理もない、実の母親の私を見捨てるなんて……!」

会社の正面玄関。人目もはばからず、笹木志美がわめき散らした。谷口凛華への遠慮など、欠片もない。

野次馬はみるみる増えていく。

凛華はオフィスの大きな窓の前に立ち、その光景を見下ろした。口元に、薄い嘲笑が浮かぶ。

「……甘く見てたわ。あなたって、情に厚い人だと思ってたのに。まさか実の母親にまで知らん顔するなんてね」

いつの間にか、谷口日奈が凛華の執務室の入口に立っていた。吐き捨てるような声音。皮肉がねっとり絡みつく。

凛華は振り返りもしない。

「それで? 私が今すぐ大人しく財...

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