第111章

「奥様……本当は、こんなこと申し上げる立場じゃないのは承知しております。でも、どうしても我慢できなくて……。ほかの誰のためでもなく、お坊ちゃまのために、どうか少しだけ耐えていただけませんか」

「もしこの先、ほかの方がこちらへ嫁いできて、さらにお子さまをお産みになったら……お坊ちゃまのお立場に響きます。いまは大旦那様がいらっしゃるから、奥様がそう簡単に虐げられることもありません。でしたら、もう少しだけ踏ん張ってみては……」

その使用人は、谷口凛華と桐生朔弥が結婚したときから、この家に仕えている。

家の中で起きたことは、すべてこの目で見てきた。だからこそ、谷口凛華が不憫でならなかった。

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