第12章

その瞬間、あたりは水を打ったように静まり返った。

居並ぶ全員の視線が、いっせいに谷口凛華へと注がれる。もともと彼女は、あの手この手で桐生家に嫁ぎ込んだ女だと思われていた。結婚してからも、誰に対しても必死に機嫌を取り続けてきた。だからこそ、今の態度はあまりにも不可解だった。

周囲の目など意にも介さず、谷口凛華は向かい側を一度も見ない。ひたすら大旦那様の好物を取り分け、丁寧に殻をむいた海老をそっと老紳士の椀へ入れていく。

最初から最後まで、やさしく、細やかで、行き届いていた。並べるものすべてが、大旦那様の好みに合わせたものばかりだ。

大旦那様は実にうまそうに箸を進め、その眼差しもいっそう...

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