第34章

手の中のそれをぎゅっと握りしめたまま、谷口凛華は夢でも見ているような気分だった。周囲の光も音も、どこか薄い膜越しに感じる。――現実味がない。

しばらく呆けたあと、彼女はもう一度確かめるように問い返した。

「……これ、本当に私に?」

岡野明裕がぷっと吹き出す。

「わかりやすいだろ。ほら、ちゃんと名前が書いてある」

谷口凛華。

くっきりと印字されたその文字が、やけに眩しい。

なのに、どうしてこんなにも実感が湧かないのだろう。

普段は冷静で自分を崩さない凛華も、さすがに胸の高鳴りを隠せなかった。

「これって……」

彼女が本当に気にしているのは、研究グループの枠を使ってしまうのか...

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