第35章

谷口凛華の眼差しはひややかで、その奥にあるのは新しい知識への渇きだけだった。最初から最後まで、彼女はもう片方を一瞥すらしない。

谷口日奈も、谷口家の面々も、彼女にとっては空気と変わらない存在だった。

本当に吹っ切れたらしい。

岡野明裕はふっと笑った。

「いいじゃないか。立派だよ」

次の瞬間、彼はわざと声を潜める。

「それにしても、ずいぶん派手にやる人もいたもんだな」

そのとき、入口のほうがざわついた。

続いて、仕立てのいいスーツに身を包み、すらりとした体躯に気品をまとった桐生朔弥が、人に囲まれながら入ってくる。

たちまち何人もの人間が前へ出て、我先にと声をかけた。

桐生朔...

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