第37章

谷口凛華のほうで何が起きたかなど、誰も気づいていなかった。

谷口茜は、ちょうどいい角度の笑みを浮かべたまま、言い終えると何事もなかったようにすっと距離を取る。

「ねえ、私の言ってること、間違ってないでしょ?」

声は相変わらず柔らかい。けれど瞳の奥には、濃く粘つく悪意がぎっしり詰まっていた。吐く言葉の一つ一つが、挑発そのもの。

凛華は紅い唇をきゅっとつり上げ、その悪意を真正面から受け止めた。表情は凪いだ水面みたいに、波ひとつ立たない。

茜が驚いたように目を見開いた、その瞬間――凛華はふっと笑い、半歩踏み込み、茜の腕をがしっと掴んだ。

「楽しい?」

「今日わざわざ私にこんな話しに来...

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