第52章

部屋の中は、まるですべてが止まってしまったみたいに静まり返っていた。

谷口凛華は指先をわずかに丸める。掌はじっとりと汗ばんでいる。

正直、会社のこととなると、まるで自信がなかった。

なにしろ谷口日奈は、桐生朔弥が長年大事にしてきた相手だ。断られることも、彼女は最初から覚悟していた。

会社の株を買い取ることなんて、中島美玲にできるなら、自分にだってできる。

ただ、もう少し多くの資産を動かす必要があるだけだ。

そんな息の詰まるような沈黙の中、不意に桐生朔弥の薄い唇がわずかに弧を描いた。

「問題ない」

たった一言。

けれどその言葉は、ひどく軽やかに部屋の中へ落ちて、いつまでも耳に...

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