第53章

桐生颯馬を学校まで送り届けたあと、谷口凛華のもとに桐生朔弥から電話が入った。

通話がつながっても、しばらくは沈黙ばかりが続く。

どれほど経ったころだろう。ようやく桐生朔弥が口を開いた。

「家の執事から連絡があった。大旦那様がこっちに数日滞在なさる。だから、お前は……」

谷口凛華は小さくため息をついた。

「わかりました」

正式に離婚が成立するまでは、こういうことでも互いに足並みをそろえなければならない。

通話を切ったあと、谷口凛華は重たい表情のまましばらく動けなかった。あの家に戻って暮らすと考えただけで、胸の奥に石でも詰め込まれたように苦しくなる。

勤務時間に入ると、谷口凛華は...

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