第65章
食卓はしんと静まり返り、聞こえるのは食べ物を噛む音だけだった。
谷口凛華は黙って待っていた。だが、桐生朔弥がいつまで経っても口を開かない。胸が、すとんと重く沈む。
――断られる。
そう思いかけた、そのとき。
「問題ない。ただ、この時期だと席の手配は……」
しゃがれた声が響き、桐生朔弥は手にしていたグラスを置いた。口の中の最後のひと口を飲み込んでから、淡々と続ける。
高級オークションの座席には、それなりの作法がある。主催側はまずVIP客に招待状を送り、その客たちが優先的に席を選ぶ。
もちろん、直前になって参加を決めた場合、用意される席はやや後方になる。
一瞬きょとんとした谷口凛...
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