第67章

桐生朔弥が口を開いた瞬間、周囲から「ひっ」と息を呑む気配が走った。

無理もない。いま声を上げた男は、木原家の実権を握る当主――木原匡央その人だった。

木原家と、桐生朔弥の桐生家は、ほか二家と並び「名門四大家」と呼ばれる。

四家は互いに補い合い、利害は複雑に絡み合い、共同の案件も多い。要するに、持ちつ持たれつ。表向きは面子を立て合うのが暗黙の了解だ。

それなのに桐生朔弥は、この場で木原家の人間に容赦がない。

「はぁ……かっこよすぎて気絶しそう」

「奥さんのために、別の家の面子まで潰すとか……強すぎ」

ひそひそとした囁きが、波みたいに広がっていく。

その会話を耳にして、谷口凛華は...

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