第72章

昼どき。

岡野明裕が谷口凛華の前まで来て、軽い調子で言った。

「行こうぜ。友だちの店が開店したんだ。俺が招待されたからさ。凛華も連れてって、うまいもん食わせてやる」

凛華は時間を確かめ、こくりと頷く。

「いいよ。もちろん」

道中、岡野明裕は止まらなかった。新しい店の看板メニューだの、限定のデザートだの、あれこれと熱弁をふるう。凛華は思わず唾を飲み込み、口の中が勝手に潤んだ。

――けれど。

店が見えてきた瞬間、凛華の笑みはすっと消えた。

少し先に、数台の高級車が並ぶように停まっている。

そして、そこから降りてきた顔ぶれを見た途端、凛華の表情はさらに冷えた。

新しくできた...

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