第74章

ダイニングテーブルのそば。

普段は食べるのが早い桐生颯馬が、今日は驚くほど動きが遅かった。

牛乳を一杯、三十分もかけているのに、まだ飲み終わらない。

谷口凛華はとうとう堪えきれず言った。

「ほら、早くして。今日は私たちが主催側なんだから、先に行って準備しないと。お客さまの対応もあるでしょ」

桐生颯馬は「うん」と返事だけはした。けれど手は、まるで止まったままみたいに変わらない。

凛華は牛乳を取り上げると、ゴクゴクと飲み干し、ステーキまで口に押し込む。

「はい、おしまい。行くよ。向こうには美味しいものがいっぱいあるから」

拒む隙すら与えず、凛華は服を手にして颯馬を洗面所へ連れてい...

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