第76章

ゆるやかな音楽が流れ始めた。

谷口健弘は、いつもの卑屈さが嘘みたいに消えていた。顎をつんと上げ、どこか得意げで、いかにも気位の高い顔つきだ。

今日の彼は、数十万は下らないオーダーメイドのスーツに身を包み、名の知れた腕時計を光らせ、足元はイタリア製の特注革靴。全身から「勝ち組」の空気が滲み出ている。

事情を知らない人が見たら、新郎でもやるのかと勘違いするだろう。

隣の中島美玲もまた、気品と華やかさで目を引いた。

全身が宝飾で彩られ、どのアクセサリーも下手をすれば家一軒分――そんな迫力。

谷口健弘の言葉を聞いた美玲は、不満げに鼻を鳴らす。

「自分に実力があるとでも思ってるの? みん...

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