第8章

そよ風が吹き、髪がふわりと舞った。

谷口日奈はまた髪を整え、わざと首筋のキスマークを覗かせたまま、瞬きひとつせず谷口凛華を見つめる。まるで、その顔から何かを読み取ろうとしているみたいに。

けれど――何もない。

彼女が期待した発狂も、嫉妬も、悲しみもない。ただ、静かな表情がそこにあるだけだった。

谷口日奈は紅い唇を吊り上げ、嘲るように笑う。

「よくもまあ、データ取りに来られるわね。知ってる? あなたのデータ、ミスだらけ。会社の成長のためじゃなきゃ、私だって引き継ぎなんかしないわ」

瞳の底の嫌悪が、今にも溢れそうだった。

谷口凛華は笑った。怒りで、逆に笑ってしまった。

「……私の...

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