第85章

界隈なんて、広いようで狭い。狭いようで、案外広い。

AI業界は今まさに熱を帯びていて、遅れまいと多くの人間が次々に参入している。

桐生朔弥も、谷口日奈も――これから先、もっと多くの名前がこの渦に飲み込まれていくのだろう。

岡野明裕の言うとおりだ。

人も、出来事も。避けようとして避けきれるものじゃない。

昼。

岡野明裕は動きが早かった。瀬川尚樹をあっという間に呼び出し、席を整える。

個室。

瀬川尚樹は谷口凛華に視線を向けると、初対面の顔で手を差し出した。

「はじめまして。お会いできて光栄です」

谷口凛華も、何も知らないふりでその手を取る。

「こちらこそ。よろしくお願いしま...

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