第92章

おばあさんはふう、とため息をつくと、痛ましげに谷口凛華の頭を撫でた。

「私はもう年寄りだもの。どうってことないよ。ただ……あんたが可哀想でね」

凛華が、どれほど大切な存在なのか。おばあさんの胸には、言葉では言い表せないほどの痛みがあった。

この子は幼いころに両親が離婚し、その後は母親に無理やり、良心に背くことまでさせられてきた。

そして、あのとき凛華が桐生朔弥に嫁いだ経緯――真相までは知らずとも、おばあさんには察しがつく部分が多かった。

目の縁を赤くしたおばあさんは、笹木明子を見て、それから心配そうな杉浦哲雄へ視線を移す。

「あなたたち二人は、本当にいい子だよ。ここまでずっと……...

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