第97章

「早く戻ってきて……谷口健弘を呼んでよ! 私、あの人がいないとダメなの……離れたら死んじゃう……!」

背後から飛んできた叫び声は、耳を刺すほどヒステリックで、聞いているだけで背筋が粟立った。

谷口凛華は足を止めないまま病室を出て、きちんと扉を閉める。

それでもガラス越しに、笹木志美が正気を失ったように暴れ、顔を歪めているのが見えた。

凛華は淡く一瞥しただけで踵を返し、そのまま歩き去る。向かったのは、祖母の病室だった。

祖母は笹木志美に何が起きているのか、もちろん知らない。けれど凛華の顔色が冴えないのを見て、やわらかな声で尋ねた。

「どうしたの? また誰かに面倒なこと言われた?」

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