第99章

「日奈さん……」

静まり返った病室に、子どものかすれた囁きが落ちた。

谷口凛華は顔色を失い、握りしめた指先が白くなる。耳を疑った。

――自分が手塩にかけて育ててきた息子だ。

それなのに、意識のない間に呼んだのは、谷口日奈の名。

胸の奥が、すとんと底へ落ちた。

かすかな足音が近づく。

谷口日奈が扉口から入ってくる。その一歩一歩が、凛華の心臓を踏みつけるみたいだった。

日奈はベッドの反対側へ回り込み、桐生颯馬の手を握ったまま、挑発するように凛華を見た。

実の母親だろうと、何だろうと。

具合が悪いときに呼ぶのが、別の女の名前だなんて。

――崩れていく凛華の顔が見たい。

そう...

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