飛行機のチケット
顔がカッと熱くなるのがわかる。この女、何様のつもり?
「俺は違うよ」フィンは考える間もなく即答する。
「つまんないの」アンバーは唇を尖らせる。「でも、彼女の裸は見てみたいかも」
こいつ、何なの? 私を馬鹿にしてるわけ? 地味で冴えない友達をからかってるの? それとも、本当に興味があるってこと?
どっちにしても、ここに残って確かめる気にはなれない。
私はきびすを返し、人混みをかき分けてトイレへと向かった。スペースと空気、そして静寂が必要だった。
バカ、バカ、大バカ。心の中で何度も唱える。今夜、一体何を期待していたというの?
洗面所に入り、シンクに寄りかかって、汚れた鏡に映る自分の姿を見つめる。
「しっかりしなさいよ」私は呟く。「あなたが言い出したことでしょ」
フィンを元気づけるための私の名案は、見事に裏目に出た。デリラから気を逸らせるどころか、アンバーの腕の中へと彼を押しやってしまったのだ。そして今、私はトイレに隠れ、二人はたぶん唾液と電話番号を交換している最中だ。
手首に冷水をかけ、口紅を塗り直し、戻るための覚悟を決める。私は大人の女だ。親友が誰かとくっつくのを見るくらい、どうってことない。もう十年もそうしてきたんだから。
だが、ようやく勇気を振り絞ってクラブに戻り、ダンスフロアにフィンの見慣れた姿を探したが、彼はどこにもいなかった。
彼とアンバーが踊っていた場所は今、自撮りに夢中な女子大生のグループに占領されている。胸の中でパニックが燃え広がり、汗ばんだ体を押し分けながら彼を探す。私を置いて帰るはずがない。そうだよね?
二人が正面玄関から抜け出そうとしているのが見えた。フィンの腕はアンバーの腰に回され、彼女は彼が言った何かに頭をのけ反らせて笑っている。二人は帰ろうとしているのだ。一緒に。私にはメール一本よこさずに。
私は出口へと強引に進み、浴びせられる罵声や睨みを無視した。
外に飛び出すと、ひんやりとした夜気が肌を打つ。ちょうどフィンが私の車のところで、鍵――私の鍵だ――をごそごそといじっているのが見えた。
「ちょっと、ちょっと待ってよ。どこ行くつもり?」ヒールの音を響かせながら、私は彼らに駆け寄る。
フィンは驚いて顔を上げた。「場所を変えて飲み直すんだよ、スローン」
「それで、私の車を使うことにしたわけ?」
彼にも多少の良心はあるらしく、気まずそうな顔をして首の後ろに手をやった。普段なら魅力的だと感じるお決まりの仕草だ。だが今夜は、私の怒りを煽るだけだった。私の車を盗もうとしておきながら、少年のような困り顔で突っ立っているなんて、よくもまあ。
アンバーは呆れたように目を回した。「落ち着きなって、ママ。ウーバーで帰ればいいじゃん」
「そんなことするもんですか」私はフィンの手から鍵をひったくる。「二人とも酔っ払ってるじゃない。後部座席に乗って。私が運転する」
アンバーは目を細めたが、それでも車に乗り込んだ。
フィンも彼女に続き、私と目を合わせようとはしなかった。私は必要以上に強くドアを閉めた。
ドライブは苦痛そのものだった。暗い通りを運転しながら、ハンドルを握る私の指関節は白く浮き出ている。バックミラーの中で起きていることを無視しようと必死だった。だが、聞こえないふりをするのは不可能だ――ささやき声、クスクス笑い、そして濡れたようなキスの音。
ラジオの音量を上げたが、それでも二人の話し声をかき消すことはできない。
「たまらなく欲しいよ」フィンが言う。
「ここで抱いて。今すぐに」アンバーが応える。
彼女の声に鳥肌が立つ。
「うげっ。私の車でヤッたりしたら、二人とも窓から放り出すからね」私は言い放ち、二人を睨みつけようとしてハンドルを少しふらつかせた。
後部座席の二人は絡み合っていた。アンバーはほとんどフィンの膝の上に乗っており、彼女の口紅が彼の首筋にべったりと付いている。彼女の手は、危険なほど太ももの高い位置にあった。
彼女は鏡越しに私の視線をとらえ、ニヤリと笑った。「一緒にどう?」舌先が唇を濡らす。「楽しいよ」
危うく道を外れるところだった。
「何だって?」私の声は裏返ってしまった。
「聞こえたでしょ。ずっと3Pってやってみたかったんだよね」
バックミラー越しにフィンと目が合う。私がキレているのが彼にもわかったのだろう。「アンバー、それはちょっと――」
「まさか、考えたこともないなんて言わせないわよ、フィン」彼女は彼の言葉を遮った。「あんたのその可愛いオタク友達、欲求不満で必死じゃない。あの……堅苦しい理性の下じゃ、きっと野獣みたいに乱れるわよ」
顔がカッと熱くなり、車の窓が曇らないのが不思議なくらいだった。「酔ってるのよ」私はなんとか声を絞り出した。「二人とも」
「そんなに酔ってないわよ」アンバーは猫なで声で言った。「本音が出る程度には酔ってるけどね。どう、スローン? あんたと私、それにフィンでさ。フィンの手が体に触れるところ、百万回は妄想したでしょ?」
車内はエンジンの低い唸りと、私自身の早鐘を打つ心臓の音以外、静まり返った。アンバーは私の最も深く、堅く守ってきた秘密を大声で暴露し、なんでもないことのように私たちの間の空気に放り投げたのだ。単なる酔っ払いの戯言のように。数え切れないほどの夜、私を眠れなくさせてきた悩みではなく。
私はハンドルを強く握りしめ、前方の道路を見据えた。バックミラーを見るのが怖かった。私の顔を見て、フィンが何を思うか知るのが怖かったからだ。
「アンバー、やめろ」フィンが言った。「彼女が困ってるだろ」
「そうかしら?」アンバーが私の方へ身を乗り出した。「それとも、スローンが考えてることを代弁してるだけじゃない? だからお目付け役としてフィンについてきたんでしょ? 彼が欲しいのよ」
私はブレーキを強く踏み、急ハンドルで車を路肩に寄せた。「降りて」震える声で言った。「二人とも、私の車から降りて」
「スローン、頼むよ」フィンが言った。
「本気よ。降りて。ウーバーでも呼んで帰ればいいわ。私は帰る」
アンバーが笑った。ガラスが割れるような甲高い音だった。「うっそ、やっぱり図星だったんだ。あんた、マジで彼とヤリたいのね」
「アンバー!」フィンが鋭い声を出した。「いい加減にしろ」
彼女はこれっぽっちのことだと思っているのか? 単なる下世話な肉体的魅力だと? フィンが私にとってどんな存在か、彼女には何一つわかっていない。私が抱く感情の深さを理解する概念すら持ち合わせていないのだ。彼女は私の愛を安っぽく、恥ずべきものへと貶めた。
振り返った私の手は震えていた。「降りて。今すぐ」
私の形相にただならぬものを感じたのか、彼らは大人しく従った。フィンが先に降り、まだ笑い続けているアンバーが歩道によろめき出るのを手を貸して支えた。二人がどこへ行くのか見届けるつもりはなかった。私はタイヤをきしませて車を発進させた。視界は溢れそうな涙で滲んでいた。
ほぼ一週間、私はフィンからの電話を無視し続けた。
着信音が鳴っても放置した。通知が来てもスワイプして消した。
血管を駆け巡る屈辱感を塗りつぶそうと、私は仕事に没頭した。
だが、フィン・ハートリーはゴキブリのような男だ。いつだって侵入経路を見つけ出す。
「俺を避けてるのか、スローン?」頭上から声がした。
モニターから顔を上げる。そこには、まるでこのビルが自分の持ち物であるかのように、私の個室ブースの縁に寄りかかる彼がいた。髪はくしゃくしゃで、黒い瞳の下には寝不足の隈ができている。ひどい顔だ。いい気味。
「誰が入れたの?」私は言った。
「受付の子、俺に気があるんだよ。忘れた?」
「フィン、私忙しいの」私は画面に向き直った。「あとにしてくれない?」(願わくば、永遠に)
「話してくれるまでここを動かないぞ」
周囲を見回した。同僚たちが露骨にこちらを覗き見ている。経理のジェナなんて、今まさにIT課のカーラを肘でつついたところだ。最高。これで私は社内のドラマの主役ってわけね。
「声を落としてよ」私は声を潜めた。「みんな見てるじゃない」
「俺に見とれてるんだろ」彼がニヤリと笑う。
「ほんと、自意識過剰ね」
「なんだよ、その態度は。もしかして……生理中とか?」
はあ? こいつ、最低。
私は椅子を回転させて彼に向き直り、目を細めた。「あんた、よくもそんな——」
「冗談だよ!」彼は降参するように両手を上げた。「おいおい、スローン。一体どうしちゃったんだよ?」
どうしちゃったんだ、だと? 本気でわかってないの? いいわ、そのふざけた茶番に付き合ってあげる。
喉の奥が詰まるのを感じながら、私は彼を睨みつけた。「何の用、フィン?」
彼はジャケットのポケットに手を突っ込み、私の机の上に何かを放り投げた。
「何これ?」
「ノースカロライナ州アッシュビル行きの航空券だ。七週間後の便を取った」
私は眉をひそめた。嫌な予感がする。「どうして私に航空券なんて渡すの、フィン?」
「俺とお前で、デリラの結婚式に乗り込むんだよ」
